今大会で引退するかもしれません…。
「社会人の立場で大会結果を求めている拳士」から極たまに聞く言葉。
武道に引退と言うのはないはずと思いますが、
そんな彼らの言葉を聞くと若き頃を思い出します。
私は今から20年ほど前の2004年、
名古屋ドームで開催された全国大会を最後に大会に出場しないことを決めました。
理由はいくつかありますが、一つに絞れるものではありません。
一つに絞れるようなものではないので、
これが理由だと決めること自体が悪いことだと思います。
決勝の演武直前に、これで最後になるなと悟りました。
自分が納得できる演武をさせてもらえる相手は今大会でいなくなる。
(組む相手がいるだけで幸せ)
例え組み続けられたとしても、
納得できる演武が評価されない時は大会に出ないことを決めていました。
決勝の演武が終わった直後、
コートに残らずそのまま勝手に観客席に戻ってしまいました。
いけないことですが、
色んな感情が混ざりその場に居られなくなっての行動でした。。。
同じ土俵で演武をした。
母校日体大F先輩から「良い演武だったぞ!」
との言葉に当時母校のコーチをしていた教え子たちの前で涙してしまいました。
いつも私から厳しい指導を受けていた教え子たちは、
どう見ていたかは分かりませんがビックリしていたことでしょう。
上を目指すためには様々なことを諦め、色んなことを犠牲にする必要があります。
納得できる結果ではなかったとき、このまま続けて満足が得られる結果を次も得られるのか?
いまの環境と状況を鑑みて出場しない方が良いのでは?と迷うのは当然。
人生、あるいは拳歴に一つの区切りをつけようかと思ってしまう。
ただその時、
諦めることは逃げること。
楽しみであることとして割り切ることは言い訳。
そのような定義にしてしまい、
引くに引けない心の悩みを抱えてしまうこともあった。
でも、そんな定義であったからこそ。
頑張って来れたはずだと思います。
このまま続けていれば、
次は納得のいく結果が得られるかもしれない。
しかし続けている間は色んなことを諦める必要もあり、犠牲にすることも多々ある。
つまり他の可能性を失うことになる。
命は限りあり、時間は有限。
果たしてどっちが良いのか?
判断を強いられるのが人生、最後は自分で決めなければならない。
諦めれば次に生けるかもしれない。
でも諦めれば、
今やっていることの可能性を失ってしまいかねない。
誰かが肩を叩いて「はい。おしまい!」とは言ってくれない。
自分に残された人生をどう活かすか?
自問自答しながら、
少しずつ腑に落ちていく自分がいました。
何に時間を費やすか?
可能性はあるけど、可能性がかなり低くなっているものに。
時間を費やすことが、
果たして自分のこれからの人生にとって良いのか。
と考えた時にそうは思えないというのが、
大会には出るのは最後と思った理由でもありました。
もっと別のことに費やした方が人生は楽しいと思ったからです。
継続は大事ではある。
けれども、
既に勝負が決まっているかもしれないのに、
ずっと時間を費やしていることは無駄になる。
無駄とまでは言い過ぎではと言われても、
かなり可能性が低いものであるのは間違いない。
ずっと時間を費やすのは不幸になる。
もちろん上を目指すことより、
大会に出ることだけを楽しみにしている拳士はいます。
高い結果を望んではいないけど、
続けることが自分の糧になっているのは幸せだなぁと思います。
しかし自分は高い結果を望む者。
出るなら徹底的がモットーです。
だから、
諦め続けてて出場することだけはやめようと思っていました。
そんなモットーのある状態で続けていても、
人生の糧にはならないどころか惨めになる。
期待できないものに対して時間を費やすことに意味を見出せない。
それよりは希望が持てることに費やした方が遥かに幸せ。
自分が決めたことで費やした時間、選んだ結果責任を引き受ける。
やっているからには頑張るけど、僅かにでもダメだと思っているなら諦める。
とまぁ長く書きまとまりがありませんが、
1%の可能性に賭けるか?否か?
しかし潔く諦めれば、また違うことに時間を費やせば全然違う楽しい人生があるかもしれないと。
しかしこれだけの情報化社会になると自分が選んだことが良かったのか?
正しかったのか?悩むこともあるでしょう。
それでも自分に納得させることが大事。
そのためには人生のストーリーを作っていくことであり、ゴールに着くまでの一環のイベントとして捉えていくことが大事かと思います。
最後にもう一度、武道に引退はありません。
大会に出ないだけです。
今でも五十路手前の私に、
周囲の人たちが大会出場を勧めてくれる。
言って頂けているだけでありがたいですが、余程のことがない限り出場はしない。
道院長は門下生を育てることに注力し、自分自身の大会実績を積む立場ではないと強く思うからです。
余程のことはいつか起こるかも(笑)
20年ぶりに復帰した時、
大学のコーチの頃よりも指導に関しては、
経験も知識も二、三、四段とレベルアップし、
日本一を目指すくらいの気概で道院長をしております。
だから、大会出場に悩む拳士にアドバイスの一つでもしてあげたいというのが本音です。
そんな拳士に応えただけで、あの頃の悔しい思いを少しでも緩和することができるのです。