少林寺拳法の乱捕り(スパーリング)において、指導者である私が本当に相対したくない、恐ろしいと感じる拳士はどんなタイプでしょうか。
それは、多くの攻撃手法を器用に使いこなす拳士ではありません。 たった一つでも「絶対に防げない超強力な攻撃(切り札)」を持っている拳士です。
多彩な技を平均的に持っている拳士よりも、内部感覚を極限まで研ぎ澄まし、磨きに磨き抜かれた「リーサルウェポン(最終兵器)」を一つだけ持っている拳士の方が、実戦において圧倒的に強いのです。
「その技が来る」というプレッシャーが相手を制す
乱捕りで相対した時、相手が「これだけは誰にも負けない」という絶対的な技を持っていることが分かっていると、どうなるか。 こちらは、相手がその技を繰り出せる状況を作らせないように、常に警戒を強いられます。その時点で、すでに主導権(優位性)を握られてしまっているのです。
逆に、相手がどれほど多彩な攻撃手法やコンビネーションを持っていたとしても、すべての技が「そこそこ」のレベルであり、卓越したものが一つもなければ、全く恐れるに足りません。
強力な攻撃技を「たった一つ」持っているということは、実戦においてそれほどまでに有利に働くのです。
自分の特性を活かした「絶対的な武器」を作る
超強力な技といっても、内容はなんだって構いません。
圧倒的に速く重い「順突き」。 予測しにくい体捌きからの「反撃」。 あるいは、触れただけで相手の体軸を崩し、無力化してしまう「柔法の投げ」。
自分の身体特性や得意な動きを見極め、相手に簡単には防がれないような技を見つけたら、それを徹底的に磨き上げます。身体の連動、理合い、心と体が一致する「拳禅一如」の境地までその一つの技を昇華させれば、それは誰にも負けない絶対的な武器になります。
「手数を増やす」より「一つを深く掘り下げる」
熱心な拳士ほど、つい多くを求めてしまい、「色んな技を繰り出せるようになりたい」と多彩な技の練習に時間を費やしがちです。
しかし、色々な技を浅く広く練習して、どれも中途半端なレベルにとどまっていては、乱捕りにおいて決して有利には働きません。競技としての乱捕りで結果を出したいのであれば、「これなら他に絶対に負けない」という技を、最低でも一つは持っておくべきです。
色々な技に気を取られるよりも、一つのことに集中して深く、泥臭く反復練習をすること。
多くの技(手数)を増やすことよりも、得意な技、より強力な技を一つだけ選び抜き、徹底的に磨かせることが、乱捕りを制する上で最も重要であり、一番の近道なのだと私は確信しています。


